住宅の省エネ向上へ、3省合同検討会が初会合
国土交通省は、経済産業省、環境省との合同による「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」(座長:田辺新一早稲田大学創造理工学部建築学科教授)を設置。19日、初会合を開いた。
国が打ち出した「2050カーボンニュートラル」(2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにする)の実現に向け、住宅・建築物におけるさらなる省エネルギー化や脱炭素化のためのハード・ソフト両面の取り組みと施策の方向性はどうあるべきかについて省庁横断で議論する。会議の冒頭挨拶した住宅局長の和田信貴氏は「わが国のエネルギー消費の約3割を占める住宅・建築物分野において、さらなる省エネルギー化や脱炭素化に向けしっかり取り組んでいかなくてはならず、赤羽国土交通大臣からの強いご指示により3省庁による検討会を設置した」などと語った。
4月1日施行された「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」の改正(改正建築物省エネ法)により、省エネ基準への適合を建築確認の要件とする中規模のオフィスビル等の床面積の合計の下限について、2,000平方メートルから300平方メートルに引き下げるなど対象範囲が拡大された。一方、300平方メートル未満の小規模建築物・住宅については、大手ハウスメーカーや賃貸住宅メーカー等については「住宅トップランナー制度」が設けられているものの、中小工務店の負担軽減のため、適合義務化ではなく設計者(建築士)から建築主への説明義務制度の創設にとどまっている。 検討会では、すべての住宅について基準適合を義務とすることや新築住宅等への太陽光パネル設置義務化といったさらなる省エネ性能向上に向けた対策強化をどう図っていくか、より高い省エネ性能を実現するための誘導的措置はどうあるべきかなどが、今後の議論の中心となる。
会合では、住宅・建築物の省エネ対策に現状について、さまざまなデータが示された。国土交通省が中小工務店と建築士を対象に、省エネ基準の習熟状況についてアンケートしたところ、「省エネ計算ができる」との回答は、どちらも約5割にとどまっていた。新築戸建住宅のうち、省エネ基準に適合しているものは8割超、共同住宅は7割超(いずれも19年度時点)だった。一方で、5,000万戸の住宅ストック全体では、現行の省エネ基準に適合しているものは約11%に過ぎず(18年時点)、新築時の適合強化に加え、既存ストックについても省エネ向上を図らなければならない実態が明らかとなった。
検討会は今後、CO2排出削減に向けたライフスタイルの実現や、吸収源対策としての木造・木質化の取り組みなど、カーボンニュートラルの実現に向けさまざまな角度から議論を進める。28日実施する次回会合で関係団体からのヒアリングを行ない、5月中旬開催予定の第3回会合で、今後の検討のたたき台を示す。6月上旬にとりまとめ骨子案、6月下旬にとりまとめ案を議論する予定。
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