ケネディクス、不動産STOで個人投資家を開拓
ケネディクス(株)は、STO(Security Token Offering)による不動産証券化への取り組みを強化する。デジタル技術を使い低コストで小規模の不動産を証券化することで売買単位を低く設定。JREIT、私募ファンドに次ぐ第3の事業として、個人投資家層を開拓していく。
STOは、2020年5月の金融商品取引法改正で可能となったもので、ブロックチェーン技術を使いデジタル証券(セキュリティ・トークン=ST)を発行して資金調達を行なうもの。不動産STOは、その裏付け資産が不動産やその権利であるものを指す。同社は21年7月、東京都渋谷区内の賃貸マンションを裏付け資産とする公募型不動産STOを発行(公募額14億5,300万円)。これまで3案件で約105億円の不動産STOを発行し、引き受け証券会社を通じて販売してきた。22年10月末時点で発行された不動産STOは同社案件含め8件、約179億円、AUM(裏付不動産)残高は約347億円となっている。
JREITは上場市場で取引を行なうコストを賄うため、最低でも300億〜400億円のポートフォリオが必要となるが、不動産STはデジタル技術で取引・決済手続きを効率化・自動化して運用コストを圧縮できるため、個別不動産でも証券化が可能。運用資産の中身が分かりやすくなる、売買単位が1口50万〜100万円と低く設定できる、取引証券会社の店頭での売買が可能で一定の流動性も期待できること、金商法による投資家保護が図られる、ネットでの販売が向いている、短期間(約3ヵ月)で販売が可能などの理由から、より個人投資家向きの商品特性となる。
同社は不動産STOの誕生を「多様な需要に迅速に対応できる多品種少量販売が可能で、機関投資家とは効用の尺度が違う個人投資家からの資金調達機会の多様化・拡大の好機」(KDX証券設立準備(株)代表取締役・中尾彰宏氏)とみており、30年にはグループ全体で、STを利用した不動産デジタルファンド期末AUM(不動産価額ベース)約8,000億円を目指す考え。
一方、顧客への販路確保は課題で、「ネット証券は引受機能が限定的で、総合証券会社は引受機能があっても対面販売が中心」(中尾氏)。そこで、取り扱い商品をSTに特化し、投資家口座を持たずにSTを協業証券会社に卸す証券会社(KDX証券(仮称))を立ち上げ、23年中をめどに営業を開始する方針。将来的にはPTS(取引所)を介したセカンダリーマーケットでの売買流動性を確保できるような仕組みづくりを目指す。
同社では、STに係る組成コストは参入プレーヤーの増加、管理コストはデジタル技術の活用により低下していくと予想しており、STを利用した不動産デジタルファンド期末AUMは、30年には2兆5,000億円規模となるとみている。
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