地所レジ、災害時の「共助」促す賃貸マンション
三菱地所レジデンス(株)は25日、賃貸マンション「ザ・パークハビオ中野富士見町ガーデン」(東京都中野区、総戸数115戸)を報道陣に公開した。災害時に居住者同士が助け合うための防災ツール「ファーストミッションボックス(以下、FMB)」等を設置するなど、ハード・ソフト両面での防災対策を多数盛り込んだ。
同物件は、東京メトロ丸ノ内線「中野富士見町」駅徒歩4分に立地する、鉄筋コンクリート造地上14階建ての賃貸マンション。住戸は、1K74戸、1LDK26戸、2LDK15戸。専有面積約25〜51平方メートル。建物は2023年8月完成済み。
三菱地所グループは、東日本大震災以後、ハード・ソフト両面から分譲マンションの防災対策を進めてきた。しかし、賃貸マンションは居住者のほとんどがシングルで短期間で入居者が入れ替わること、入居者による管理組合がないことなど、発災時の共助に必要なコミュニティー形成が難しいといった理由から、分譲マンションで培った防災対策がそのまま導入できないという課題があった。そこで、発災時その場に居合わせた入居者だけで災害対応活動ができる仕組みとして、FMBを導入した。同物件の周辺には三菱地所グループの分譲マンションが集中しており、分譲マンションと同レベルの防災対策導入に至った。
FMBは、長野県飯田市と(株)危機管理教育研究所が考案した防災ツールを、同物件仕様にアレンジしている。普段は、コワーキングスペースの棚に箱に詰め設置されており、中に入った指示カードの通りに動くことで、災害本部の設営、入居者の安否確認、救護活動、トイレの設置・運用、防犯対策を、専門知識や経験なしに進めることができる。また、被災生活が長引いた場合を考え、被災者の声や被災地での事例をもとに「水の確保」「物資の確保」「情報収集」「ごみの保管」「健康管理」への対応法をカードにした「セカンドミッションボックス」も備え付けた。
ハード面では、太陽光発電で得た余剰電力を共用部の蓄電池に貯めて、災害時活動や日常生活に必要となる共用部分(セキュリティシステム・共用廊下照明・災害用コンセント)へ電力共有する仕組みを導入。各フロアに居住者が個別に防災用品を収納する「MY防災倉庫」を用意した。広さ50平方メートルのコワーキングスペースは、災害活動本部・救護スペースとして利用することを考え、大型のソファを設置している。共用防災倉庫には、ガスボンベで動く発電機、トランシーバー、マンホールトイレ、非常用照明、住戸分の携帯トイレなどを備えている。また、住戸には賃貸住宅では珍しい非常灯と、発災時の安否を示すマグネットカードを設置した。
8月から53戸を募集しており、約8割が申し込み・契約済み。賃料は、10万〜22万7,000円。坪単価は約1万5,000円。各住戸には、FMBの説明をまとめたチラシを配布。管理会社への連絡が困難な夜間等に「震度5以上の地震が発生」した場合、FMBの活用を促す。同日物件説明にあたった同社賃貸住宅開発部開発第三グループリーダーの最田真生子氏は「カードをめくって指示通りに行動すれば、一定レベルの初期防災活動ができるようにと考えた。導入には、共用部の仕様から考えていく必要があるため、今後も物件ごとに検討していくことになる。導入事例を増やしていくことで、ユーザーに賃貸住宅での防災対策の在り方を周知していきたい」などと語った。
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