多用な暮らし方ができる高齢者の住まいのあり方検討
国土交通省は22日、第6回サービス付き高齢者向け住宅に関する懇談会(座長:?橋紘士(一社)高齢者住宅協会顧問・東京通信大学人間福祉学部教授)を開催した。
サービス付き高齢者向け住宅は、2011年の制度創設から10年が経過し、登録戸数も約27万戸まで増加。高齢期の居住の場の選択肢として、より一層重要な役割が求められている。一方で、高齢者の居住実態を把握した上で、改めて高齢期の住まいのあり方を検討することが重要となっている。同省はそれらを踏まえ、有識者から今後の取り組みの進め方について助言を求めるため、18年1月に同懇談会を設置した。
今回は、高齢者が求めるサ高住のあり方、そして高齢者から「できる限り自宅に住み続けたい、自宅で最期を迎えたい」というニーズが多いことから在宅支援の方法について、先進事例を共有し議論した。
事例発表では、大和ハウス工業(株)がタウンマネジメントを手掛ける、住民の50%が高齢者の大規模戸建住宅地「上郷ネオポリス」(横浜市栄区、総戸数868戸)における在宅継続支援の取り組み、福岡県太宰府市でサ高住や有料老人ホームを運営する(株)誠心(福岡県太宰府市、代表取締役:吉松泰子氏)の住宅型有料老人ホーム「アクラスタウン」(全46室)の地域開放・交流の取り組みについて、担当者が取組内容を紹介した。
上郷ネオポリスでは、地域内在宅サービスの整備と空き家活用を連動したプロジェクトを進めている。敷地内の公有地に高齢者向け住宅等を整備し、高齢化した戸建住宅オーナーはそこに移り住む。移住後の空き家はリノベーションし若年層に提供することで、住民が慣れ親しんだ場所に住み続けられるようにしていく。看護小規模多機能施設も設けることで、今住んでいる家に住み続けたいオーナーを見守る体制も整備する。なお、上郷ネオポリスでは、コロナ禍でコミュニティ拠点が閉鎖に追い込まれるなど交流機会が激減したことから、テレビ電話の導入による交流の促進、引きこもり防止のためのグリーンスローモビリティ実証事業の実施などにも取り組んでいる。 アクラスタウンでは、図書室やカフェなどの共用スペースを設け、入居者がそこで働くことで生きがいを創出。それらを地域に開放することで、多世代で交流できるようにしている。また、入居者自らが選択できる安価な生活支援サービスを提供。介護保険ではカバーされない見守り等日常生活をしていく上で必要なサービスを、定額制の料金体系で提供し、それ以上に必要な介護サービスについては時間単位で提供している。
委員からは、「入居者に寄り添ったソフトが求められる。今回の事例にあった生活支援サービスと従来の介護は異なる。あくまでも高齢者の自立した生活をサポートする考えだ。職員が意識改革をしていく必要がある」「高齢者が社会に参加できる、活躍できる場の提供が重要」「地域住民の理解を得て、まち全体で高齢者が暮らしやすい環境を整えることが必要」「高齢者向け住宅の考え方を既存の仕組みや枠組みを超えて再度考える必要がある」「高齢者が社会への参加や活躍する機会を設けるべき」などの意見があった。同省住宅局安心居住推進課課長の上森康幹氏は「高齢者が増える中、サ高住をはじめ、多様な選択肢の中から自己決定できる住まいや環境の整備が必要になっている。今回の意見交換の内容を今後の政策に生かしたい」と話した。
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